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OTON GLASS [視覚障碍者としてのあれこれ]

こんばんは、gonanaです。
私のような視覚障害者にとって、紙に印刷された文字や看板の文字などのような文字による情報や、物の色や形などの、視覚による情報を得ることは、人それぞれ程度の差はあるもののやはりかなりの困難を伴います。
しかし、近年のIT技術の急速な発展が、その困難さをかなり改善しつつあります。
例えば、視覚障害者である私がパソコンやスマートフォンなどを操作する際に画面に表示された文字を読み上げるために使用するスクリーンリーダーもその一つですし、紙に印刷された(書かれた)文字情報をイメージスキャナやデジタルカメラによって読みとり、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換するOCR(Optical Character Recognition/Reader:光学的文字認識)という技術を用いて文字データをスクリーンリーダーを組み込んだパソコンなどでの読み上げが可能なWordファイルやテキストファイルなどの形式にしたり、印刷物などをスマートフォンのカメラで撮影し、その場で認識して読み上げるOCRアプリなどがそれです。
そして、今回ご紹介する「OTON GLASS」(オトングラス)も、そうした文字による情報を得ることに困難さを感じている人々にとって心強い味方になりそうな技術です。

「OTON GLASS」は、上にも書いたとおり文字を読むことに困難さを感じている人々のために開発されたいわゆる「スマートグラス」です。
詳細は下記のリンクをご覧ください。
https://otonglass.jp/products/
この「OTON GLASS」、もともとは視覚障害者のためというよりは、脳梗塞の後遺症などにより、脳の言語を司る部分(言語野=げんごや)に障害が残り文字を読む能力を失ったり低下する「失読症」の患者さんを想定して開発されたものだそうです。ちなみに「OTON GLASS」という商品名の由来も、失読症を抱えている父親を救いたいという開発者の思いが込められているそうです。
しかし、カメラでとらえた文字情報の画像を音声として読み上げてくれるというのは、視覚障害者にとっても非常にありがたい技術で、私はその存在を知って以来大きな関心を持ち、一度体験してみたいと思っていました。
そんな中、昨年夏、私の所属する視覚障害者団体の月例会に先立ってこの「OTON GLASS」などの視覚障害者向けの支援機器の体験会が開かれることを知り、参加しました。
会場には「OTON GLASS」の開発を担当している技術者の方もいらっしゃっており、まずは簡単に説明を受けた後、早速体験に映りました。
「OTON GLASS」の本体はメガネ型をしており、メガネでいえばレンズに当たる部分は何もない素通しになっています。この本体を普通のメガネをかける時のように顔に装着したとき、眉間の位置に対象物を撮影するカメラ、左耳の近くには2つの押しボタンのある操作部分が付いています。そこから伸びたコードが「OTON GLASS」の機能を司るコンピュータと電源バッテリーを納めた機器箱につながっています。
本体を手に取ってみると、メガネ部分は案外軽く、ごつごつして重いという印象はなく、装着してもあまり違和感を感じません。
体験では、A4サイズの紙に印刷された書類や、食品のパッケージの文字、郵便物の宛名の文字など、いろいろな文字の読み上げを聴くことができました。
読みたい文字の書かれた紙などを目の前に持ち、本体の操作部分にある2つのボタンのうち1つを押すと、対象物を本体のカメラで撮影して文字情報を読み上げます。読み上げを聞いてみると非常に自然で滑らかで驚きました。また、かなり悪筆だったり崩した文字でなければ、手書きの文字もかなりの精度で正しく読み上げてくれるようです。
また、操作部分のもう一つのボタンを押すことで、日本語で書かれた文字情報を英訳(逆も可能)することもできます。
ただ体験会の際に開発者の方から伺った話では、「OTON GLASS」もまだまだ開発途上のシステムゆえ、解決すべき課題もいろいろあるそうです。例えば、新聞や雑誌などのように「段組み」がされていたり写真や図版などが含まれるレイアウトの文書を正確に読み上げるにはまだ難があるそうですし、テレビのテロップなどのように動きのある文字情報の読み取りにも課題が残っているようです。
また「OTON GLASS」を使うにはインターネットに接続していることが前提なので、携帯型のWi-Fiルータなどネットに接続できる環境を別に整える必要があることなど、外出先で使用したいときの使いやすさについても改良の余地がありそうです。
しかし、そうした課題はまだまだあるとはいえ、体験会のわずか15~20分ほどの限られた時間の中でも「OTON GLASS」の便利さは十分に感じることができましたし、これがあれば文字を読むことに困難さを抱えている人々にとって生活や仕事、趣味などいろいろな場面で「できること」が増えていくきっかけになるのではないかと感じました。
この時の体験を通して私は「OTON GLASS」に対する関心がさらに高まり、正直なところ一日も早く手にしたくなりました。現状では価格も30~40万円ほどと、気軽に購入できる金額とは言い難い「OTON GLASS」ですが、今後様々なバージョンアップを経た量産品が広く流通するようになり、障害者の日常生活用具として少額の負担で購入できる自治体が増えるなどすれば、多くの人々に恩恵をもたらす可能性を十分持つ商品だと思いますし、私もそのような日が早くやってくることを願っています。
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