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テープ起こし [視覚障碍者としてのあれこれ]

こんにちは、gonanaです。
皆さんは「テープ起こし」または「文字起こし」(以下、必要な個所以外はまとめて「テープ起こし」といいます)と呼ばれる仕事をご存じでしょうか。
この「テープ起こし」とは、講演会・会議・座談会・対談・インタビューなどで収録された人の声を聞き取り、その内容を文章に起こして紙媒体にまとめたりタイピングによりコンピュータに入力してテキストデータ化する(かつてはタイプライターによる入力も広く行われていました)作業です。

私は視覚障がい者になるまで、「テープ起こし」なる仕事があるということは何となく知ってはいたものの、具体的にそれがどのように行われているのかについてはほとんど知りませんでした。
しかし、今からちょうど7年前に、そのテープ起こしの作業を初めて体験する機会がありました。
以前何度かこのブログでも書いていますが、私は視覚障がい者となった後、所沢市にある国立障害者リハビリテーションセンターでの自立訓練を修了し、引き続きその後の再就職に向けて同じ敷地にある国立職業リハビリテーションセンターでの職業訓練を受けることになりました。
センターへの入所にあたっては「入所試験」というほどでもないのでしょうが一応簡単な国語や数学のテストや作文、それに実技面での能力をみると思われる作業課題による選考が行われました。
そして、私が受講しようとしていた視覚障がい者向けのパソコン訓練のコースの作業課題が、テープ起こしだったのです。
私はこの時に初めて「テープ起こし」の方法を知ることになりました。
それは、スクリーンリーダー(画面読み上げソフト)を組み込んだパソコンの前に座り、講演会の内容を録音した音源(文字通りテープに録音したものか音声ファイルかは不明)を、再生・停止・早送り・巻き戻しといった操作をすべて足元に敷いたマットに埋め込まれたスイッチを足で操作することにより行う再生機器で聞きながら、パソコンで入力するというものでした。
私はそもそもこういった機器があることも知らなかったので、この時の一連の選考でいろいろとお世話になったセンターの職員の方から事前に再生機器の操作方法を教えていただいてから課題に臨みましたが、指でラジカセやコンポなどのボタンを操作するのとはわけが違い、マットのどのあたりを踏めば目的の操作ができるのか目で確認できない私にとって、すべての操作を足を使って行わなければならないのは相当に難しく、なかなか思うように入力が進みません。
結局、制限時間までに入力し終えたのは、課題の音源の分量の6~7割くらい(課題文の時間や文字数がどれくらいだったかは忘れてしまいましたが)がやっとで、「テープ起こし」という仕事をスピードと正確さを両立しつつ行うことがいかに難しいかを身をもって知ることができました。
そして、足元スイッチを巧みに使い、スピードと正確さをいずれも満足させることで記録を残すテープ起こしという仕事に敬意を抱けるようになりました。
結果的には、テープ起こしについては満足のいく成果は残せなかったものの、何とか職業リハビリテーションセンターへの入所はでき、そのおかげもあって今の会社に就職できた私がいます。

再就職してからはテープ起こしに直接携わるようなことは最近までありませんでしたが、ここ数か月前から、同じ部署の同僚とともに定期的に文字起こしの作業をすることになりました。
これは毎月月初に行われるグループ企業の全体朝礼での社長や各部門のトップのコメントの音声(さすがに今回はテープではなく音声ファイルですが)を聴覚に障がいを持つ社員にも理解しやすいようにテキストデータに起こすものです。
さすがに7年前のようなマット式の再生装置ではなく在宅勤務で使用しているパソコンにダウンロードした音声ファイルをパソコンのキー操作で早送りや巻き戻しなどをしながら聴き内容を入力するのですが、やはり人によって早口気味だったり発音の癖があったり、さらにはその時のマイクや録音の状態の影響で発言内容に不明瞭な部分があったりして、なかなか苦労しています。
それでも数か月文字起こし作業をしていく中で少しずつスピードと正確さを両立した文字起こしができる段階に近づいてきているらしいので、頑張っていきたいと思います。
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